本間ゴルフが2022年3月に発売したドライバーTW757の特徴と評価を紹介します。
ゴルフクラブ作りをコンピュータや3DCADだけではなく、手間がかかってもヒューマンテストを含めた「人間の感性」を加えることで、
クラフトマンシップによるクラブ作りを続けるホンマゴルフのフラッグシップモデルが「ツアーワールド」シリーズです。
伝統的にプロ、上級者好みのモデルを送り出すツアーワールドからニューモデル「TW757」が発売されました。
TW757 タイプDを使用して2022年は2勝目を狙う本間ゴルフ契約女子プロ葭葉ルミ。
つかまり重視のTW757「タイプD」を使ってスピン量が減って飛距離が伸びたと言います。
このドライバー、相当すごいと思います。普通はスピンが減るとボールが上がりにくくなるのに、これは上がる。
初速も上がり、中断道の強い球で、ランも出るのでトータルで270ヤードぐらい飛びます。
今までアゲンストだと高く上がり過ぎて球が落とされることがあったのですが、沖縄の開幕戦は風が強かったのに風の影響はほとんど感じませんでした。
ミスにも強く、芯を外した時、特に先っぽに当たると、普通はヘッドが開いて曲がったり距離をロスするのですが、このヘッドは先ヒットに強い。
右に出ても戻ってくる球が打てるようになりました。打感も上級者が好きそうな分厚いインパクト。
TW757の開発コンセプトは「プロ・上級者のフィードバックを元に、求められるニーズに応える性能を実現すること」にあります。
昨今のドライバーにおける開発目標は「ボール初速の向上」「適正な打ち出し角度」「最適なスピン量」という、
飛距離を決定づける3要素をヘッドスピードを上げるような、ゴルファー個人の鍛錬によらず「振るだけでクラブが向上させてくれる」ことにあります。
その目標に向けてメーカー各社は独自に様々な方法でアプローチしています。
TW7572機種に共通するコンセプトはボール初速を上げるため「カーボンスロット」搭載による「たわみ戻りによる反発力のアップ」です。
ホンマは今回「TW757 typeS」と「TW757 typeⅮ」の2機種を発売しました。
「TW757 typeS」と「TW757 typeⅮ」の2機種に共通する特徴は、フェースの真後ろを縦にはしるソールスリットを極限まで薄くして、
補強のためカーボンで覆うことでボールインパクトで生じるフェースのたわみ戻りをすばやく強く戻す「カーボンスロット」にすることによって、
反発力に換えてボール初速のアップを実現します。
フェース裏にスリットを設ける構造は他社のクラブでも取り入れられていますが、
強度の問題からどうしてもスロットとその周辺を肉厚にせざるをえず、
重量面と、ヘッドスピードが速い(=衝撃が大きい)ゴルファー以外にはあまり恩恵がないものになっていました。
そこでホンマはこの部分を薄くしたあとカーボンで補強することで軽く強くすることに成功しました。
そして実はホンマの最大の強みである、シャフトの自社生産によってヘッドとシャフトの一体設計が可能になり、
ヘッド重心位置、フェースアングルの調整とシャフトバリエーションとが一体となってゴルファーひとりひとりに最適なクラブを提供することが可能になっています。
TW757 type Dはつかまり重視のカーボンコンポジットヘッドです。
ヘッド体積は460CCで、type-sに比べるとやや後方に膨らんだ形状のヘッドになりますが、マットな黒基調のヘッドですので引き締まってみえます。
ソールの後方ややヒール寄りと前方トウ寄りの2箇所に可変ウェイトを搭載して、ウェイトを入れ替えることでつかまり具合を調節できるようになっています。
TW757 type Dの印象はまず、つかまりすぎないということです。そして一瞬食いついてからの球離れの速さも評価されています。
弾道は高めで高さで飛距離をかせげるドライバーになっているようです。
ホンマ伝統の洋ナシ型を踏襲したヘッド形状のTW757 type Sはヘッド体積450CCとやや小ぶりですが、みるからに叩けそうな印象のヘッドです。
こちらはソールの前後2箇所に可変ウェイトで前後のウェイトを入れ替えることで弾道高さやスピン量の調節が可能なヘッドです。
現在主流のやさしさを感じさせるヘッドとは対極に位置する、しっかり叩きに行きたい気持ちにさせるヘッドです。
しかし、見た目よりもやさしいという感想もあります。好みの弾道高さが打ちやすいという評価もあります。
ある程度のヘッドスピードを持ち、強い弾道で飛ばしたいゴルファーには最適なドライバーといえそうです。
ホンマ初といっていい低スピン弾道のドライバーだった前作TW747とはまず、全体のデザインが変わりました。
TW747が赤を差し色にして幅広いユーザーに訴求したのに対してTW757はマットブラック1色にシルバーのラインという精悍なイメージに変わりました。
また、ヘッド形状もTW747はクラウンセンターが盛り上がり、
テールに向かって急角度で下がっていくシャローバックなのに対してTW757は緩やかなカーブを描き、逆にソール側が少し反り上がった形状になっています。
これは重心位置を、ボールの「打点を基準にして」深く低くするための形状であるといえます。
「プロのニーズに応える」という主張の通り、TW757の方が、プロ、上級者を強く意識した、ボールを操作しやすい作りになっていると思われます。
飛距離を上げる3要素は「1,ボール初速の向上」、「2,最適な打ち出し角度」、「3,適正なスピン量」です。
「1,ボール初速の向上」は、ヘッド内部の上下をバーで繋いだり、クラウン部分のカーボンの形状に加工をしたり、
フェースの裏側に突起を儲けるなどでインパクトの衝撃を反発力に転化するなどメーカー各社が工夫しています。
また、「2,最適な打ち出し角度」のためにはクラウン部分に比重が軽いカーボン素材を使用して相対的に低重心化を図っています。
しかしその結果、フェースからクラウンとフェースからソールとではインパクトの衝撃が異なるので、無駄なバックスピン量生じるようになりました。
そこで、フェースとソールの境目に溝を設けることでソール側もたわんでスピン量を調節することを考えました。
この溝の発想は、かなり以前からあったのですが、強度の問題から部材を厚くせざるをえず、その結果硬く、重くなってしまうという問題が残っていました。
ホンマは今回、この溝を構成する部材を極限まで薄くして、補強のため比重が軽く反発力が高いカーボンで溝を覆うことを思いつきました。
それがカーボンスロットです。
薄いスロットはたわみやすく、反発力にすぐれたカーボンが復元する力でボールに推進力と適正スピン量を与えることが可能になったのです。
カーボンシャフトを製造するとき、長方形のカーボンシートの巻きはじめと巻き終わりはどうしても重なりますのでその分だけしなりが硬くなります。
この硬くなった部分がシャフトのどこにあるかでスイング時のクラブの挙動に影響を及ぼします。
これをスパインアングルと呼びますが、
ホンマはシャフトも自社で製造していますので、シャフト1本づつのスパインアングルを把握することができます。
したがって常に6時の位置にスパインアングルをセットすることも可能なのです。
また、可変機能もノン・ローテ―ティングシステムというこれもホンマ独自の可変機能で、シャフトの向きを変えずにロフトやライ角を調整できます。
基本的にTW757typeS、typeDともにつかまりがそれほど良いクラブではありませんので、
叩きにいっても左への引っ掛けや大フックは出にくいですが、アベレージゴルファーはこの機能をフルに活用して自分に合ったスペックにすることが重要です。
プロ、ベテランゴルファーにはどことなく安心感があり、後方に大きいヘッドが苦手のゴルファーにも魅力的なヘッドシェイプです。
打感も一瞬食いついてギュンと飛びだしてゆく、ソフトな印象です。むしろパーシモンの打感をふと思い出させてくれるTW757です。
打感と打音、飛距離にもこだわるゴルファーは1度試打してみることをおススメします。